茎(STEM)大名遊ビ篇
加爾基 精液 栗ノ花 フォトandスコア
性的ヒーリング 其の參
百色眼鏡
加爾基 精液 栗ノ花
加爾基 精液 栗ノ花 (CCCD)
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自分の感覚としては初めてレコードを作った気分なんです。それまでのレコードは実演を見て頂くためのプロモーション・ツールとして考えていたきらいもあるので、今回、初めてちゃんとした作品を作った錯覚に陥るんです。別に『無罪〜』とか『勝訴〜』もその時は『ああ、やったやった』って思ってたはずなんですけど、今回はそれと違って、新しい気持ちになれましたね。
シーナ・リンゴ
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2003年2月23日発売
初回限定盤は林檎さんからのメッセージ付き:生唾ステッカーが付属しています。
収録曲
全作詞作曲:椎名林檎
01.宗教 /歌詞・うたまっぷ
この曲は必ずしも宗教について論じているわけではなく、日本人である自分にとっての宗教のイメージをまさに曲として表現するっていう、そういう普通の音楽然としたことをやりたかったんです。この曲は細かいフレーズまで決まっていたんですけど、楽器それぞれの音圧が違うし、色彩的にもっと鮮やかにしたかったから、森先生に木管楽器を足してくださいとお願いして。しかも、弦楽器に関しても、同時に弾いて頂くと、すごい人数が必要だし、スタジオの大きさを考えると、その人数の弦楽器を同時に録ることが不可能かもしれなかったから、そういう問題をクリアして頂くために譜面を作って頂けますかってお願いをしたんです。
02.ドッペルゲンガー /歌詞・うたまっぷ
ドッペルゲンガーっていうのは幽体離脱とは別で、臨床医学用語にあるらしいんです。でも、私はもともと“ドッペルゲンガー”っていう言葉がすごく好きで、“そういうタイトルの曲をシングルで切るから”ってずっと言ってたし、それについての記述を読むたびに“実際にそういう状態になったら死ぬだろうな”って考えたんです。日常で考えても、よく、人と話をしていて“分かる!分かる!”って頷くことがあるじゃないですか。でも、他人は他人であって、その人と同化してしまったら、自分っていう存在はなくなってしまうと思うんですよ。だから、この歌詞で表しているのは人と対峙することについてと、あとは文壇への憧れなんです(笑)。
03.迷彩 歌詞・うたまっぷ
私のいままでの詞では必然性がなかったから使わなかったんだけど、この曲を含め、このアルバムではカギ括弧を使っているんです。谷口崇くんの曲で“指でさようなら”っていう曲があって、それがカギ括弧を使った2人の会話が詞になっていたんですけど、そのことを知った時、“すごい素敵だな”って思って、それ以来、憧れていたんです。ここで歌われていることは過ぎ去ったことの描写だったりするんだけど、“ああ、ヤバかった。あんなこと言っちゃったり、あんなことやっちゃった、ホントにいけない私だった”っていう、そんな感じで後から考えると恥ずかしくなることってあるじゃないですか? そういうイメージですね。
04.おだいじに歌詞・うたまっぷ
ポジティヴな喜びが目の前にあると、“夢みたい!もう死んでもいい!”みたいな感じでその他のことがどうでもよくなる時ってあるはずだし、この曲もちょうどそういう心境でした。ちなみに“おこのみで”とシンメトリーになってるけど、クレジット上に書かれてる楽器のほとんどは“おこのみで”で使っていて、この2曲に関しては身内でやろうっていうテーマで繋がってるだけですね。もちろん、この曲でも色々トライして、ドラムを入れてみたりしたんだけど、すごい可笑しいアレンジになっちゃって(笑)。だから、ここではうにさんがE-BOWっていうギターの弦を振動させるエフェクターみたいなやつと、あとはピアノの弾き語りだけですね。
05.やつつけ仕事 歌詞・うたまっぷ
この曲は“とりこし苦労”っていう曲があったから今回収録したんですけど、“やっつけ仕事”っていう曲名が付いているくらいで、アルバムの中でも群を抜いて稚拙だなって思ってたし、もともとのアレンジは『絶頂集』のヴァージョンしか頭になかったから、森先生にお任せしよう、と。アレンジはホント最高ですよね。イメージ的には(映画)『ラジオの時間』の鈴木京香さんみたいな、ああいうイメージですね。俯瞰で見ると、ものすごくちっちゃいことだし、切り取られた時間はすごく短いんだけど、そのなかで四苦八苦してて、妙に劇画タッチになっちゃう人物っていうイメージだったので、仕掛け満載なフル・オーケストラにしてください、と。
06.茎 歌詞・うたまっぷ
この曲でのこだわりどころは……自分の中で出てくるフレーズは決まってたんだけど、こういう風に歌詞とか音楽としての曲を重視したやり方は私自身も初めてだったので、アレンジに関しては頭を使いました。というのも、このレコーディングはクインテットとセクション・ストリングスを同時に鳴らすっていう、私にとっての夢の実現でしたから、それはサンプル素材を使ってしまえば、音圧的にも問題がなかったりするんだろうけど、今回は違う音量の楽器が集まってますから、最初からエンジニアさんと組んでる利点として、そのアイディアの話したうえで、初めからそれに向けて取り組みが出来たっていうことが大きいです。
07.とりこし苦労 歌詞・うたまっぷ
この曲は“とりこし苦労”っていうタイトル通り、無駄に労力を使ってみました。ただし、苦労したのはそれをまとめたうにさんかな(笑)。ここでは“とりこし苦労”っていうイメージを歌っているんだけど、男女の中でああだこうだと表層で言ってたとしても、その瞬間は表層的な話ではない気がするというか、自分がいかに特別な存在かを切々と語られたら、コロッとなっちゃうんだけど、そんなことはどうでもいい話で、言葉を交わさずとも一緒に過ごしていれば“じゃあ、これからお付き合いしようか”って言う必要がない人っていると思うんです。そういうことに対する憧れを歌っているんです。あ、でも、これは実体験じゃないですよ(笑)。
08.おこのみで 歌詞・うたまっぷ
この曲は割とこれまでの旧譜と近い世界というか、諦めているポーズですね。歌われているのは世捨て女の話で、男を食いものをするイメージです。そんな女の人が増えたら、世の中はもっといい国になるんじゃないか、と。だって、育児雑誌を読むと、女性は家庭で猛威をふるっていても、社会的にはオピニオンが反映されないというか。そういうのはもったいないと思うし、だから、男を食いものにするくらいがちょうどいいんじゃないかな、と。ちなみに歌詞に出てくる金色の爪”と“真赤な爪”っていうマニキュアの色に関しては、両方とも虚構だったり、虚栄の印象が強い色で、そういうところを含めて、好きな色です。
09.意識 歌詞・うたまっぷ
この曲には<嘘ヲ吐クナヨ>っていう一節があるんですが、女子高生がカラオケで歌ったらモテそうじゃないですか? この曲はモテ曲として提唱させて頂きたいな、と。この曲と“迷彩”は同じメンバーで録ったんですけど、スタジオでせ〜のでやり始めた時、みんな、それぞれに好きなジャンルがありそうな感じで、共通項のない人たちが集まっちゃったっていう(笑)。だから、最初は演奏のズレがすごくて、どのパートに合わせて歌っていいやら分からなくて(笑)。でも、結局はいいテイクが録れたと思います。ちなみに“迷彩”は誰かが“ロカビリーみたい”って言ってたんですけど、どうなんでしょう?よく分からないんですけど(笑)。
10.ポルターガイスト 歌詞・うたまっぷ
この曲は最初と最後の具体的なイメージがあらかじめ決まってたので、その間をさらっと読めて、さらっと聴けるものだといいなと思って。あと、この曲はね、最初のイメージがあった段階でディレクターから“ワルツ調の曲っていうだけで買いたくなっちゃう”って言われて。私としてはその曲が“ポルターガイスト”になるとは思ってなかったんだけど、<幻視を与えました>っていうくだりが既にあったから、そうなると“ドッペルゲンガー”と対になる曲だし、“相手に対して歌ってるのか、自分に対して歌ってるのかは分からないけど、ここでは騒霊っていうことにすればいいのかな”とか、色んなことを考えて、後から書き下ろした曲なんです。
11.葬列歌詞・うたまっぷ
このアルバムはA、B、サビ、大サビっていう曲構成の定石が守られていない作品だったりするんですけど、この曲も主題になってるメロディは16小節で一つの流れが終わっちゃうんですよ。でも、それを崩さずに、リズムだったり、オケがフェード・イン、フェード・アウトする感じで繋がっていって、1曲になるっていう構成で、しかも、そのフェード・イン、フェード・アウトをあくまでスムーズに世界が入れ替わる感じにしたかったんです。この曲には色んな意味が込められているし、自分の中で意味づけがはっきりしてないわけではないんだけど、どっちかと言えば、その詞の意味を気にしないで曲やメロディを聴いて頂きたいと思います。